
「築古アパートは節税と相性がいい」
このような中古不動産のメリットを聞き、購入を検討し始めた方も多いのではないでしょうか。
法定耐用年数を超えた木造アパートは、短期間で大きな減価償却費を計上できるため、給与所得の高い方ほど所得税・住民税の負担を抑えやすくなります。
一方で、築古アパートには見落とされがちな落とし穴があります。
それが「最終的にどう手放すか」という問題です。
出口の設計を誤ると、最悪の場合解体や立ち退き費用がかかり、最終的な収益が大きく減るということになりかねません。
当社はこれまでに累計4,300棟を超える収益不動産の売買に携わってきました。そして管理物件の大半が築20年以上で首都圏以外(郊外)・駅徒歩15分以上でありながら、数多くの物件を出口までサポートをしております。
本記事ではこうした実績をもとに、節税目的で築古アパートを検討している方に向けて、出口が重要な理由と難しいといわれる理由を整理したうえで、代表的な4つの出口パターンを解説します。
そして、売却時に多額の出費をすることなく利益を得るための購入時・売却時のポイントを解説します。
さらに、出口まで安心して任せられる会社の見極め方も紹介しますので、物件選びの前や物件を保有していて、そろそろ出口戦略を考えたいという方はぜひ参考にしてください。
【この記事のポイント】
・築古アパートの出口が難しいと言われる理由
・築古アパートの出口戦略4パターン
・出口戦略を成功させるための物件の選び方
・出口戦略を成功させるための売却活動の進め方
・出口まで安心して任せられる会社の見極め方
目次
1.節税目的の築古アパートほど出口が重要
不動産投資は、物件を買って終わりではありません。保有した後の売却までを含めてはじめて成果が確定するため、出口までを見据えた投資計画が必要です。
中でも、節税目的の築古アパートは特に出口戦略が重要だといわれています。その理由は2つあります。
1.1.築古アパートの減価償却後は節税効果がないから
築古アパートほど出口戦略が重要な理由の1つ目は、減価償却後に節税効果がなくなってしまうからです。
築古アパート投資は、減価償却費という、①経費計上はできるのに実際にお金は出ていかない便利な経費を使い、会計上の赤字を作って、
② その赤字を給与所得にぶつけて所得を圧縮させる(=「損益通算」)ことで節税できます。

法定耐用年数が切れた築古物件は、この減価償却費を短く大きく計上できるため、節税に向いています。
しかし減価償却を取り切ると、経費として計上できる金額が一気に減ります。すると、それまで抑えられていた税負担が増える一方で、ローンの返済額は変わりません。つまり、会計上は黒字だけど手元資金は赤字、いわゆる黒字倒産を引き起こしかねません。
そのため、減価償却後はできるだけ速やかに売却することが重要です。
1.2.減価償却した分、譲渡時に多くの税金がかかるから
2つ目の理由は減価償却額が大きいほど譲渡(売却)するときに発生する税負担が多くなるからです。
個人が不動産を譲渡することで利益を得た場合、その利益には譲渡所得として税金がかかります。
譲渡時の利益は「売った価格から取得した価格を引く(売却費 – 取得費)」で計算されますが、減価償却はその額の分だけ簿価が下がるため、取得費が下がります。
よって、減価償却費を多く計上した築古アパートほど譲渡時の利益が大きく計算され、かかる税金(譲渡所得税)も大きくなります。

したがって、築古アパートほど出口戦略を見据えて投資計画を組むことが重要です。
2. 築古アパートの出口戦略が難しいといわれる理由
1章では築古アパートにおいて、出口戦略が特に重要であることについて解説してきました。続いて2章では築古アパートの出口戦略が「難しい」と言われる理由について解説します。
2.1. 買い手が見つかりにくいから
築古アパートの出口戦略が難しい最大の理由は、買い手が見つかりにくいからです。その要因の1つとして融資の引きにくさにあります。
金融機関の多くは、法定耐用年数の残存期間をローンの返済期間の目安としています。耐用年数を超えた木造アパートでは、借入期間が短くなるか、そもそも融資が難しいケースがあります。
返済期間が短いと毎月の返済額が大きくなり、買い手のキャッシュフローが成り立ちにくくなります。その結果、購入できるのは現金購入者や、築古物件にも融資を行う一部の金融機関を利用できる投資家に限られ、買い手の母数が小さくなります。
さらに、建物の状態が読みにくいことも敬遠される理由です。築古物件は雨漏りや給排水管の劣化、シロアリ被害など、購入後に大きな修繕費がかかるリスクを抱えやすいです。そのためどんなに利回りが高くても書い手が見つからないという事態が起きやすいです。
2.2. 立ち退き費用・解体費用で多額の支出と時間がかかるから
築古アパートの出口戦略が難しい理由の2つ目に、「立ち退きや解体を行う際に多額の費用が発生し、最終的な収益がマイナスになるリスクがある」ことが挙げられます。
建物が古くなりすぎると「収益物件としてそのまま売る」選択肢が狭まり、解体して土地として売る、あるいは建て替えるといった判断が必要になる場合があります。
ここで発生するのが、立ち退き費用と解体費用です。
入居者がいる状態で解体するには、入居者に退去してもらう必要があります。
借地借家法では、貸主からの解約申し入れや更新拒絶には「正当事由」が求められ、老朽化だけでは認められにくいのが実情です。そのため、立退料を支払って合意による退去を目指すのが一般的です。ケースによっては1世帯あたり数十万〜100万円を超えることもあります。
さらに解体費用もかかります。構造やアスベストの有無によりますが、一般的な解体費用は数百万円規模になり、近年は人件費や廃棄物処理費の上昇で解体費用も上がる傾向にあります。
加えて一般的に立ち退きにかかる期間として借地借家法上最低6ヵ月~、解体工事にかかる時間として約3ヵ月ほどかかります。
アパートを解体するまでの間に費用だけでなく時間もかかり、早く売りたくても売れないため、築古物件は出口戦略が難しいと言われています。
3. 築古アパートの出口戦略4パターン
築古アパートの出口は、大きく4つのパターンに分けられます。物件の状態やエリア、保有期間、税金の状況によって最適解は異なります。
3.1. 現況のまま収益物件として売却(オーナーチェンジ)
もっともシンプルなのが、入居者がいる状態のまま売却する、オーナーチェンジという方法です。
立ち退きや解体が不要なため、追加の出費や手間を抑えられるのが最大のメリットです。
買い手は売却後も家賃収入を得たい投資家となるため、満室に近い状態であれば、利回りを根拠に価格がつきやすくなります。
一方で、状況次第では融資がつきにくく、買い手が限られる点が課題です。
3.2. 空室を埋めたり、賃料を上げたりしてから売却(バリューアップ)
2つ目に空室を埋めるためのリフォームや設備投資、募集条件の見直し、管理会社の変更などで稼働率と賃料を高めてから売却するパターンです。
不動産価格を算出する方法の1つである収益還元法では、収益物件の価格は一般的に「年間家賃収入÷利回り」で決まります。
つまり、同じ物件でも家賃収入が増えれば売却価格も上がります。
たとえば表面利回り10%で取引されるエリアなら、バリューアップ工事を行った結果、年間家賃収入が60万円増えると、理論上の売却価格は600万円上がる計算になります。
工事などを行う際は費用がかかる場合もありますが、投じた費用以上に売却価格を引き上げられれば、手残りを増やせます。
3.3. 解体して土地として売却
3つ目は老朽化が進んだ建物を解体して更地として売却する方法です。
更地であれば、戸建てやアパート・マンションの用地を探す個人・事業者にも売れるため、買い手の幅が広がります。
立地が良く、土地値が高い都心のエリアほど有利な方法です。
ただし先述の通り、立ち退き費用と解体費用がかかるうえ、全室の退去までに時間を要するため難易度は高いです。
3.4. 解体した後立て替えを行って賃貸経営を継続する
最後に4つ目は売却せずに、新築アパートへ建て替えて賃貸経営を続ける方法です。
新築になれば家賃を引き上げやすく、長期の融資も受けやすくなるため、土地を持ち続けたい方や、相続対策も視野に入れている方には有力な選択肢です。
一方で、立ち退き・解体費用に加えて建築費がかかり、4つのパターンの中で最も多額の資金が必要です。建築費の高騰も続いているため、建て替え後の家賃収入で費用を回収できるか、慎重なシミュレーションが欠かせません。
また、再建築不可の土地や、現行の建ぺい率・容積率では同規模の建物が建てられない土地もあるため、事前の確認が必須です。
築古アパートの出口戦略まとめ
| パターン | 追加の出費 | 買い手の幅 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ①現況のまま売却 | 売買諸費用 | 主に投資家 | 稼働率が高く、建物状態が良い |
| ②バリューアップして売却 | リフォーム工事 | 主に投資家(価格が上げやすい) | 建物状態次第で賃料を上げられる |
| ③更地にして土地として売却 | 立ち退き・解体費 | 個人や業者にも幅が広がる | 土地値が高いエリア |
| ④既存物件を建て替え | 立ち退き・解体費+建築費 | – | 土地を持ち続けたい、相続税対策 |
4. 多額の出費なく利益を得るための物件の選び方【購入時】
3章では、築古アパートの出口戦略のパターンについて解説しました。出口戦略は売却時に考えるものではなく、購入時から考えることが重要であることがお分かりいただけたかと思います。
この章では、次の買い手にスムーズに引き継げる物件を選ぶためのポイントを4つ解説します。
4.1. 法定耐用年数が切れたばかりの物件を購入する
節税効果と出口のしやすさを両立させるなら、法定耐用年数を超えて間もない物件が狙い目です。木造であれば、築22年を超えたばかりの物件がひとつの目安になります。
法定耐用年数をすべて経過していれば、それ以降の償却可能期間は同じなので、節税効果の面では、あえて築年数の古い物件を選ぶ必要はありません。
ただ、注意しておく必要があるのは、耐用年数が切れたばかりの物件は人気で、かつ流通している数も少ないということです。
貸家の新設着工戸数はバブル期の1987年(約85.8万戸)をピークに減少しています。
2026年時点で、木造アパートが法定耐用年数(22年)を迎えるのは2004年前後に建てられた物件ですが、2004年の貸家着工戸数は約46.5万戸と、バブル期(1987年:約85.8万戸)の約半分にとどまります。
さらにリーマンショック後の2009年には約32.1万戸まで落ち込んでおり、今後耐用年数切れを迎える比較的築浅の物件は、さらに限られていくと考えられます。(出典:国土交通省「建築着工統計調査」)
そのため、法定耐用年数が切れた物件はそもそも流通数が少なく、もし売られていたら狙い目と考えるべきでしょう。
4.2. 賃貸需要が落ちにくいエリアの物件を購入する
築古アパートでも、賃貸需要が安定しているエリアであれば入居者を確保でき、収益物件としての価値を保てます。
見るべきは、駅からの距離、周辺の人口動態、生活利便性などです。自治体が公表している将来人口推計や、周辺の賃貸物件の募集状況は確認しておくとよいでしょう。
注意したいのは、特定の大学や工場など、単一の需要に依存したエリアです。キャンパスの移転や工場の撤退があると、エリア全体の賃貸需要が一気に落ち込むリスクがあります。
複数の需要源があり、単身者・ファミリーなど幅広い層が住むエリアのほうが、出口時にも買い手がつきやすくなります。
4.3. 遵法性に問題がない物件を購入する
物件を購入する際は遵法性に問題がないかを確認しましょう。
建築確認どおりに建てられていない、あるいは増築などで建ぺい率・容積率をオーバーしている「違反建築物」は、金融機関の融資対象外となることが多く、買い手が極端に限られます。
また、建築当時は適法でも現行基準に適合しない「既存不適格建築物」は、建て替え時に同じ規模の建物が建てられないなど、金融機関の融資評価が下がる要因になります。
具体的には、建ぺい率・容積率の超過、検査済証の有無、接道義務(原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たしているかといった点を確認しましょう。接道義務を満たさない「再建築不可物件」は、建て替えも土地としての売却も難しく、出口の選択肢が大きく狭まります。
購入前に、重要事項説明書や役所調査の結果をしっかり確認することが重要です。
4.4. 土地値の出る物件を購入する
最後は、土地の価値がしっかりある物件を選ぶことです。
購入価格に対して土地の評価額(路線価や公示地価、実勢価格)が高い物件であれば、土地が価格を下支えし、大きく値下がりしにくくなります。一般的に、購入価格の7割以上が土地値ですと、土地値のでる物件といえます。
購入前に「実売の土地値はいくらになりますか」と聞いて、物件の土地値も判断材料の1つにすることをおすすめします。
5. 出費を抑えて売るための進め方【売却時】
4章では、出口を見据えた物件の購入について解説しました。5章では、実際に売却をする際の進め方について解説します。
譲渡税と買主に有利な条件という2つの観点から、確実に売り切るためのポイントを解説します。
5.1. 長期譲渡を迎えたタイミングで売却する
不動産を譲渡して利益が出ると、その利益(譲渡所得)に対して税金が課されます。そして不動産の譲渡所得は、その不動産をどれくらいの期間保有していたかによって、大きく異なります。
| 区分 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
売却した時点における所有期間が5年以内であれば短期譲渡所得となり、利益に対して39.63%の税金がかかります。一方、5年を超える場合は長期譲渡所得となり利益に対して20.315%を税金として支払います。
不動産の所有期間が違うだけで支払う税金に大きな差が出るため、長期譲渡を迎えたタイミングで売却することは出口を成功させるために重要です。
5.2. 買主に有利な条件を整えて売却する
築古アパートを高く、早く売るには、「買主が買いやすい状態」を整えることが近道です。具体的には、次のような準備が有効です。
- 稼働率を高めておく:満室に近い状態で、安定した家賃収入の実績を示す
- 修繕履歴を整理する:いつ・どこを・いくらで修繕したかを一覧にして開示する
- レントロールを明確にする:入居者の契約条件や滞納状況などを整理し、収支の透明性を高める
- 建物状況調査を活用する:第三者による診断で、建物状態への買主の不安を解消する
- 融資を引きやすい物件状態にする:築古物件にも好条件で融資を引くために、修繕の実施や価格の調整をする
特に最後の融資については、物件売却の結果を左右するとても重要な条件の1つです。融資評価を伸ばす一例として、売却前に部分的な修繕をすることなどが挙げられます。
また、レントロールや修繕履歴が適切に管理されているかは、スムーズな売却を進めるうえで重要です。
6. 出口まで安心して任せられる会社の見極め方
ここまで見てきたように、築古アパートの出口戦略は、購入時の物件選びから保有中の管理、売却時の準備までがつながっていることがご理解いただけたかと思います。
この章では、購入から売却を共にサポートしてくれる会社選びが重要です。この章では出口まで安心して任せられる会社の見極め方について解説します。
6.1. 買取・売却実績を開示しているか
1つ目の見極め方の基準は、その会社の実績です。
売却のサポートを受けるなら、築古物件の買取や売却仲介の実績がある会社を選びましょう。
実績件数や成約事例を具体的に開示している会社であれば、築古物件の出口に関するノウハウが蓄積されている可能性が高いと言えます。自社で買取を行っている会社であれば、市場で買い手が見つからない場合の受け皿にもなります。
6.2. 築古物件でも高い入居率を保っているか
2つ目の基準は築古物件の入居率です。
言うまでもなく賃貸経営の明暗は、入居率で大きく左右されます。
管理物件全体の入居率を公表しているか、そしてその数値が築古物件でも高い水準を保っているかを確認しましょう。
築古物件で高い入居率を維持できる会社は、リフォームの提案力や募集力、入居者様の対応力を備えていると考えられます。
保有中の収益を安定させることが、そのまま売却価格を高めることにつながります。
6.3. 購入後・管理・売却まで一気通貫でサポートする体制があるか
3つ目に会社のサポート体制についてです。
購入、管理、修繕、売却をそれぞれ別の会社に任せると、情報が断片的になり、出口を見据えた一貫した運営が難しくなります。
物件の購入から賃貸管理、修繕、売却までを一社でサポートできる会社であれば、保有期間中の稼働状況や修繕履歴をすべて把握しているため、売却時にも買主に対して説得力のある情報を提示できます。
6.4. 出口を見据えた緻密なシミュレーションが用意されているか
最後に4つ目は、出口までを見据えたシミュレーションを提案してくれるかです。
表面利回りや節税額だけを強調し、「いつ・いくらで売るか」まで示さない提案には要注意です。
信頼できる会社は、減価償却終了後のキャッシュフロー、デッドクロスの時期、長期譲渡での売却想定価格、譲渡所得税を差し引いた最終的な手残りまで、保有期間全体を通したシミュレーションを提示してくれます。
また不動産は築年数とともに一般的に価格が下がるものになります。
立地が良いからといって出口での利益(キャピタルゲイン)を前提にシミュレーションを提案された際は要注意です。
出口に頼らずとも、保有中の家賃収入と節税効果で十分プラスが狙えるシミュレーションだと信頼できるといえるでしょう。
まとめ
ここまで築古アパートの出口について解説してきました。ポイントは以下の通りです。
- 築古アパートは節税メリットが大きいが、出口戦略が難しい
- 満室もしくは入居率が高い/家賃上げの余地があるなら建物付きで売却、老朽化が激しいなら更地にするか建て替えも検討しよう
- 物件を出口を見据えて、物件周辺の賃貸需要や遵法性を確認するのがおすすめ
- 出口の際は長期譲渡のタイミングで、融資がつきやすいよう建物を整備する
- 築古アパート販売の実績・ノウハウや出口までを見据えたシミュレーションがある不動産会社への相談がおすすめ
築古アパートは、短期間で大きな減価償却費を計上できる、節税と相性のよい投資対象です。しかしその節税効果は、売却時の譲渡所得税で精算される「繰り延べ」の性質を持っており、出口戦略まで設計して初めて利益として確定します。
築古アパートの購入を検討される際は、この記事を参考にして出口までを想定したうえで購入することをおすすめします。
最後に、当社は築古アパートの購入から管理、そして売却まで、一貫してお任せいただける実績と体制を整えております。
収益不動産の売買はこれまでに累計4,300棟を超えております。
また郊外・駅遠を中心とした物件を中心に管理しており、一般的には出口が多いと言われる物件でも数多くのお客様の出口をサポートしてまいりました。
無料の投資相談では、出口までを含めた収支シミュレーションをお見せしたうえで投資家様に物件をご提案しております。
築古アパートを安心して取り組みたい方は、お気軽にご相談ください。








コメント