IRR(内部収益率)とは?計算方法や利回りとの違い、不動産投資での活用法を解説

IRR
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投資案件の収益性を評価する指標の一つに、IRRInternal Rate of Return、内部収益率)があります。

IRRは、投資資金をどれくらいの期間で回収できるかを考慮し、投資の効率性を測る指標です。最終的に同じ金額を回収できる投資でも、短い期間で利益を得られるほどIRRは高くなります。

これはなぜかというと、早期にプラスのキャッシュフローを得られれば、再投資することでさらに資金を増やすことができるため、より優れた(=効率性の高い)投資であるといえるからです。

キャッシュフローを得られるまでの「期間」を評価するという点において利回りとは異なっており、毎年得られる金額が変動しがちな不動産投資などで、特に重要となる指標です。

投下した資金をどれだけ効率的に回収できるかを判断できるため、投資期間が異なる商品や、投資対象が異なる場合でも、収益率を比較することができます。

IRRの優位性
・早期に投資資金を回収できるような収益率の高い案件を判別できる
・キャッシュフローが不安定な投資案件でも収益率を測れる 例)不動産投資
・投資期間・対象が異なる場合でも比較できる。

ただし、特に不動産投資においては、「IRRが〇%以上の物件だけ買え!」というような明確な基準はありません。IRRの数値にこだわることよりも、「早期に利益を得られる投資は収益性が高い」というIRRの概念を知った上で、自分の投資法を選択することが重要でしょう。

この記事では、IRRの意味や利回りとの違い、計算方法、(特に不動産投資における)投資判断への役立て方をわかりやすく解説します。


1. IRRとは

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IRRとは、「投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値が等しくなる割引率」のことです。

もう少し平たくいうと、投資額=将来得られるお金を現在の価値に換算した金額となるような割引率をIRRといいます。

冒頭でも述べた通り、早期に利益を獲得できる投資案件ほどIRRは高くなり、より収益率の高い投資であると判断されます。これは、お金の価値は時間によって異なり、早くに得られる利益ほど(再投資で増やすことができるため)価値が高いからです。

とはいえ、この説明では今ひとつピンとこない方が多いのではないでしょうか。IRRを理解するために、まずは「割引率」について解説します。

1.1. 割引率とは

割引率とは、将来のお金の価値を現在の価値に換算する(割り引く)ときの利率(年率)です。

なぜ将来のお金の価値を割り引く必要があるかというと、現在と将来ではお金の価値が異なるからです。お金は運用して増やすことができるため、現在において価値が最も大きく、遠い将来ほど価値が小さくなります。お金には利息がつくため、「時間的価値」が生じるのです。

例えば年利5%の投資商品を100万円で購入すると、1年後には105万円を得られます。これは、現在の100万円と1年後の105万円の価値が等しいことを意味します。このように時間軸によってお金の価値は変わるため、将来のキャッシュフローを予測する際は、それらを現在の価値に割り戻して測る必要があります。

将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際は、先ほどと逆の計算をします。1年後の105万円の価値は、年利5%で割り戻し、現在価値に換算すると100万円になります。このとき計算に用いた年利5%が「割引率」です。

現在価値と将来価値(n年後)の換算式は、下記の通りとなります。

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1.2. IRRの計算式

割引率と現在価値について理解すれば、IRRを求めることができます。

IRRの定義をもう一度思い出してみましょう。IRRとは、「投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値が等しくなる割引率」のことです。つまり、現在の投資額と将来得られるキャッシュフローがわかれば、IRRを求めることができます。

将来価値を現在価値に割り引く計算はすでに説明した通りですので、各年のキャッシュフローの現在価値を足し合わせていきます。

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1.3. IRRはExcelで簡単に計算できる

IRRの計算式を見ればわかる通り、投資期間が長ければ長いほど計算は複雑になります。IRRを手計算で求めるのは難しいし面倒だと感じる方が多いでしょう。

しかし、安心してください。IRRはExcelのIRR関数を使うことで簡単に算出できます。

例として、Excelで以下のような2つの投資案件のIRRを算出してみます。どちらも初期投資額は100、最終的に得られる金額は110です。両者のIRRがどうなるか比較してみましょう。

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早期にプラスのキャッシュフローを得られる案件Aの方がIRRが高く、より効率的な投資であることがわかります。各年のキャッシュフローを入力し、IRRを表示させたいセルに「=IRR(範囲,推定値)」を入力してください。推定値は省略可能ですので、未入力でも算出できます。
計算結果は以下の通りとなりました。

案件AのIRR:2.057%
案件BのIRR:2.000%


2. IRRのメリット・デメリット

IRRの計算からわかるように、IRRは投資資金を回収するまでの期間を考慮することで、もっとも収益率の高い投資案件を見極めることができます。「限られた資金をどこに投下すべきか?」を知ることができる、とても便利な指標です。

しかし、IRRにはデメリットもあります。それは、「収益率」の高さを測ることができる一方、「投資規模」を無視している点です。IRRを投資判断に用いる際には、このようなデメリットに注意する必要があります。

2.1. IRRのメリットと役立つ場面

IRRの特徴は、投資において重要となる以下の数字をすべて考慮している点です。

【開始時】初期投資額
【運用時】保有期間中の収益(インカムゲイン)
【売却時】売却価格

特に重要なのが、IRRが保有期間中のキャッシュフローの変動を考慮して収益率を計算できる点です。この特徴により、IRRは不動産投資などの毎年キャッシュフローが変動するような投資案件を評価するのに適しています。

不動産投資では、保有期間中の収支は常に変動します。例えば空室率の変化や家賃の上昇・下落によって、賃料収入が変動します。また、大規模修繕によって多額の出費が発生する年もあるでしょう。このような収支の変動を加味して、投資期間を通しての収益率を算出できるのが、IRRの最大のメリットです。

不動産投資などで最も一般的な指標である「利回り」とIRRの違いをみてみましょう。利回りには、表面利回りと実質利回りがあります。

例えば購入価格5,000万円・年間満室想定賃料500万円なら、表面利回りは10%です。計算が簡単でわかりやすいというメリットから、最もよく使われる指標でしょう。不動産情報サイトやマイソクなどでも、基本的には表面利回りが表記されています。

実質利回りは、購入価格と賃料収入に加えて購入時の諸費用や保有期間中の諸経費・税金・ローン返済なども加味するため、表面利回りよりも正確に収支を予測できます。しかし、いずれにしても利回りでは、保有期間中のキャッシュフローの変化を考慮できません。

IRRは利回りと比べると算出するのが面倒ですが、単純な利回り計算だけではわからない、お金の「時間的価値」まで加味して優れた投資対象を見つけることができます。不動産投資のように期間中のキャッシュフローが変化する投資案件を検討する際には、ぜひ活用したい指標です。

2.2. IRRのデメリット:投資規模を考慮できない

IRRのデメリットは、投資規模を考慮できない点です。IRRは投資期間全体の「収益率」を測ることに特化している一方、「収益額」を無視してしまいます。

大前提として、基本的に投資において最も重視すべきは、最大の利益を獲得することでしょう。IRRを用いて収益率の高い案件を選んだとしても、結果として収益額が大きい案件を見落としてしまっては、元も子もありません。

したがって、IRRが高ければ高いほど良い投資かというと、必ずしもそうではありません。IRRを用いる際は、利益額にもきちんと目を向けるように注意しましょう。

逆に、資本制約がある(投資できる資金に限度がある)場合には、IRRの高さを基準に判断することができます。決められた資金を投下するならば、最も効率的に回収できる対象に投資するのが望ましいからです。

個人投資家が不動産投資をおこなう際には、捻出できる自己資金に制限があるケースがほとんどでしょうから、基本的にはIRRが高い物件を探すのがよいでしょう。


3. 不動産投資でのIRRの活用法

前章までで、IRRが高い投資案件ほど収益率が高いことを説明しました。限られた資金で投資をする際には、基本的にはIRRが高い物件を探すというアプローチでよいでしょう。

しかし、IRRが高ければ高いほど良い投資かというと、そうではありません。IRRが投資規模(利益の大きさ)を考慮できないことはすでに説明しましたが、さらに、「IRRが高いほどリスクが高い」という点にも注意する必要があります。

したがって、「IRRが〇%以下の物件はダメ」というようにIRRの細かい数値にこだわることには、あまり意味がありません。重要なのは、IRRの概念を理解した上で、どのような投資法が自分に適しているかを見つけることです。この章では、IRRを不動産投資に生かす方法を解説します。

3.1. IRRが高い物件の特徴

投資案件を選ぶ上で、IRRをもとに収益性の高い案件を判断できることがわかりました。
しかし、例えば不動産投資で物件を探す際に、あらゆる物件のIRRをすべて計算する手間はかけられません。
IRRが高い物件の特徴を知ることで、収益性の高い物件を見つけやすくしましょう

IRRが高い物件の特徴
・早期にプラスのキャッシュフローを得られる物件 例)耐用年数を過ぎて減価償却を大きくとれる物件
・高値で売却できる(資産価値が下がりにくい)物件 例)駅近などの利便性の高い立地、人口が減らない地域の物件

早期にプラスのキャッシュフローを得られる物件

早期に利益を得られる物件ほど、IRRは高くなります。

例えば、築古の木造アパートなどは、IRRが高くなる傾向があります。これは、最初の数年間で減価償却費を大きく取ることで、大きなプラスのキャッシュフローを得られるからです。耐用年数22年を過ぎた木造アパートの場合、4年間で減価償却することができます。

一方で新築木造アパートの場合は22年かけて減価償却するため、長期的に安定した利益を得られる傾向があり、IRRは相対的に低くなります。

高値で売却できる(資産価値が下がりにくい)物件

IRRは、計算式を見ればわかるように、売却時のキャッシュフローも考慮しています。保有期間中に得られるキャッシュフローの現在価値がどんなに高くても、最終的に売却価格が低くなってしまうような物件はIRRが低くなってしまいます。

高値で売却できるのは、購入から年数が経過しても価格が下がりにくい、あるいは価格が上昇するような物件です。以下のような物件は、価格が下がりにくい傾向があります。

・「住みたい街ランキング」上位などの人気エリア
・駅から近いなど、生活の利便性が高いエリア
・首都圏などの人口が減らない地域
・中古物件(新築は価値が下がりやすい)

3.2. IRRが高い物件ほどリスクも高い

IRRには「エクイティIRR」と「プロジェクトIRR」という2種類があります。

エクイティIRR:自己資金のみを初期投資として計算したIRR

プロジェクトIRR:投資総額(借入金+自己資金)を初期投資として計算したIRR

不動産投資で一般的に用いられるのは、エクイティIRRです。レバレッジを効かせることで、自己資金をどれだけ効率的に運用できるかわかるという点がメリットです。しかし、レバレッジを効かせて自己資金を少なくすればするほど、IRRが高くなるという点には注意が必要です。フルローンに近いほど自己資金を少なくすれば、IRRは異常に高い値を示します。

IRRが高い優良な投資商品だと思ったら、ハイレバレッジの高リスク商品だったというケースも十分あり得ます。エクイティIRRで自己資金を効率的に運用できるかを測るのと同時に、プロジェクトIRRで投資全体の収益率を把握するとよいでしょう。

3.3. 自分の投資スタイルに合わせてIRRを用いるべき

IRRが高い物件ほど収益率(投資の効率性)は高いですが、必ずしもIRRが高ければ良いわけではないことは、これまでに説明した通りです。最終的には、自分の投資スタイルに合わせて、IRRを活用すると良いでしょう。

早期にキャッシュフローを得て資産を拡大させたい方は、IRRが高い築古木造アパートなどに投資すると良いでしょう。この場合、同じような物件を比較する際にIRRを用いることには意味があります。

一方で、長期間安定的に収益を得たい方は、IRRが低くても、新築や築浅の物件の方が適しています。そもそも、短期的な売却を想定していないような場合には、IRRを計算すること自体にあまり意味がありません。売却時期が先になるほど、当然IRRは低くなるからです。


4. まとめ

IRRの意味や計算方法、不動産投資における活用法について解説しました。

IRRは投資において、「手元の資金をどれだけ効率的に運用できるか」を測れる非常に便利な指標です。しかし、IRRが高い投資が必ずしも良い投資であるとは限りません。

特に不動産投資の場合、IRRの概念・特徴を理解した上でどのような物件を購入すべきか、自分の投資スタイルに合わせてIRRを用いることが大切です。

本記事でIRRについて理解を深め、ぜひ投資判断に役立ててください。

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