不動産投資で減価償却費を活用して節税できる人と節税できない人

結論からいうと、不動産投資で節税はできます。
そして不動産投資で節税をするためにカギとなるのが減価償却費です。

まず初めに、本記事は不動産投資を事業として営もうとしている方(専業大家さん等)のお役には立てないかもしれません。なぜなら、本記事でお伝えするのは、

  • 給与所得と不動産所得の会計上の赤字を相殺(=損益通算 本文で詳しく説明します)する
  • 一定期間保有後不動産を売却する

以上のことを前提とした内容です。そのため

  • 不動産が本業(給与所得がない)
  • 不動産をずっと保有して家賃収入を得る(売却前提ではない)

このような専業大家さん等には当てはめづらいからです。

あなたに給与所得があり、不動産投資で節税ができる仕組みを知りたいと思っているのなら、この記事を読むことで節税の仕組みを理解することができます。そして、詳しくは後程お伝えしますが、所得税・住民税と譲渡税率の差を利用して税の圧縮を実現するため、給与所得が高ければ高いほど節税効果が高まります。

記事を読み終えた後は、「不動産投資で節税しましょう!」という営業トークに安易に惑わされることなく、ご自身で営業マンに提案された投資スキームに節税効果があるかないかの判断ができるようになっているはずです。

監修:志田 宏樹志田
法政大学 工学部卒業。
公認会計士。前職の優成監査法人では、上場企業のインチャージ、IPO、デュ―・デリジェンス、学校法人監査等、多岐にわたる業務を担当。
現在は武蔵コーポレーション株式会社の財務会計部部長として、財務・会計関係業務の統括を行い、金融機関からの資金調達を行っている。
著書『連結決算の実務Q&A』。


1.不動産投資が節税に役立つ理由は減価償却費にあり

「不動産投資で節税しましょう!」

こんな営業トークを聞いたことありませんか?

なぜ、不動産投資が節税に役立つのか。それは、「減価償却費」という経費計上はできるのに実際の支出は伴わない、とても便利な経費を使えるからなのです。

経費を計上すると利益が減るので、利益にかかる税金は少なく済みます。しかしながら、大多数の経費(接待交際費等)は経費計上をして利益を小さくし税金額を減らしたとしても、実際の支出を伴っているため、トータルでみると手残りを増やせたとはいいづらいです。

ところが、減価償却費は会計上費用を計上できて、利益を小さくし税金額を減らせるのに、実際の支出は伴わない費用であるため、正しく使えば手残りを増やすことができるのです。この減価償却について詳しく説明していきます。

1.1.減価償却の概念を理解しよう

減価償却とは、簡単にいうと、価格が大きく何年も使えるモノについては購入した年に全額を費用計上するのではなく、何年かに分けて費用計上していこうという考え方です。

例えば、年間の利益が5000万円の会社が1億円の設備投資を行ったとして、設備の購入費用を全額購入した年に計上してしまうと、いきなり5000万円の赤字が出てしまいます。

しかし、この設備は1年で使い切るものではなく、何年にもわたって使用し、利益を生み出すモノです。

こうした企業等の実情に即した費用計上をするために整備されたのが、減価償却という考え方なのです。

(例)1億円のマンション(建物価格5,000万円)を購入して、その耐用年数(=会計上の使用可能な年数)が5年の場合
減価償却費は年に1,000万円ずつ発生し、5年にわたって費用計上します。
計算式:建物価格5,000万円÷耐用年数5年=1,000万円/年

これが減価償却費計上の考え方です。

なお、国税庁では下記のように詳しく説明しています。参考までにご覧ください。

事業などの業務のために用いられる建物、建物付属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。

減価償却資産の取得に要した金額は、取得したときに全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が財務省令の別表に定められています。減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。

(引用元:国税庁HP

1.2.減価償却が節税に利用できる理由はずばり、損益通算で所得を圧縮できるから

損益通算とは、所得の赤字と黒字を相殺することをいいます。
不動産投資においては、不動産所得の赤字を自身の所得と相殺することが可能です。

例えば、あなたが年収1200万円のサラリーマンで、1億円のマンション(建物価格5,000万円、利回り9%、耐用年数5年)を購入して、年間1,000万円の減価償却をとったとします。

この場合、実際の不動産所得の手残りは100万円ですが、会計上は500万円の赤字です。

この会計上の赤字500万円と、年収1200万円を損益通算すると、
最終的に納める税金額は年収700万円の人と同程度でよい(所得の圧縮に成功)ということなります。

これが、不動産投資を利用した節税の仕組みです。

そして、減価償却費が大きければ大きいほど会計上の赤字を大きくできるため、より多くの所得を圧縮することができ、節税効果が高まります。

1.3.減価償却による赤字がこわくない2つの理由

  • 年間1,000万円もの費用を計上したら利益が減ってしまい、赤字になるのでこわい!
  • 不動産所得で赤字を出していたら銀行に融資してもらえなくなりそうでこわい!

上記2つは当社に相談にいらっしゃるお客様の中でも誤解されている方が多いです。
以下でこの誤解を解いていきます。

・年間1,000万円もの費用を計上したら利益が減ってしまい、赤字になるのでこわい!
減価償却は、あくまで会計上で費用を計上しているだけなので、実際の手残りに影響はありません。

・不動産所得で赤字を出すと銀行に融資してもらえなくなりそうでこわい!
ここでいう「不動産所得で赤字」は減価償却後のことをいいますが、銀行が評価する利益は減価償却前のキャッシュフローです。

1.2減価償却が節税に利用できる理由はずばり、損益通算で所得を圧縮できるからの図でいうと、銀行が評価するのは減価償却前のキャッシュフロー100万円です。そのため、減価償却後500万円の赤字が出ていても全く問題ありません。


2.減価償却費の計算方法を知ろう

先ほどもお伝えしましたが、減価償却費を大きくすることで不動産投資における節税効果を高めることができます。
そのため、節税をするとして、この物件はいくら減価償却費をとれるのかを自分自身で知ることはとても大切なのです。

上記の式より、減価償却期間を短くすることで減価償却費を大きくできることが分かります。
以下で建物価格と減価償却期間について詳しく説明していきます。

2.1.建物価格の代表的な2つの算出方法

物件を購入する時に建物価格が決まりますが、総額〇万円というように話が進んでいくため、土地〇万円建物〇万円といった物件内訳を意識しない人も多いです。
しかし、先ほどもお伝えしたように、減価償却をできるのは建物だけなので、建物価格を知らないといけません。

建物価格の決め方は大きく2つあります。

① 当事者間で、実態に則した適切な価格割合を決める
② 固定資産税評価額の比率で按分(あんぶん)する

① 当事者間で、実態に則した適切な価格割合を決める
実は、土地・建物の価格は常識の範囲内で、売買契約書に土地:建物の比率を明記すれば当事者間で決めることができます。

実態の建物や土地の価値とかけ離れた価格割合に設定することはお勧めしません。しかし、リノベーション工事によって建物の価値が上がっているなどの状況であれば、建物割合を大きく設定することも認められる場合があります。

しかしながら、多くの不動産業者は「固定資産税評価額で按分しましょう」と勧めてきます。
なぜなら、建物価格を大きくしてしまうと、その分売却時の消費税が多くかかってしまい、不動産業者にとっては損だからです。

節税目的で不動産投資を実施するのであれば、売主と相談して常識の範囲内で適切に建物価格と土地価格の割合を決め、売買契約書に明記してもらいましょう。

② 固定資産税評価額の比率で按分(あんぶん)する
①の方法で折り合いがつかなかった人や、売買契約書に価格を書き忘れた人はこの方法で建物価格を決めることになります。

固定資産税評価額は「評価証明書」「公課証明書」などで確認することができます。下記の赤枠部分を見てください。

この方法は分かりやすく建物価格を決めることができますが、建物価格は小さくなりがちな方法でもあるので、減価償却費が大きくとれず節税効果が薄まる可能性が高いです。

2.2.減価償却期間の算出方法

減価償却期間は物件の構造と法定耐用年数で決まります。

新築の場合の減価償却期間

対象の物件が新築の場合、下記の表に当てはめてそのままの値が減価償却期間となります。
例えば、新築でRC造のマンションを購入した場合、減価償却期間は47年です。

なお、下記の図は税法上定められている法定耐用年数一覧です。

築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合の減価償却期間

対象の物件の築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合は、構造を上記の法定耐用年数一覧表に当てはめて減価償却期間を確認しましょう。

法定耐用年数が確認できたら、下記の式に築年数(経過年数)と法定耐用年数を当てはめて計算をします。

例えば、築15年のRC物件を購入した場合、減価償却期間は、
(47年―15年)+15年×20%=35年 となります。

築年数が法定耐用年数を超えている場合の減価償却期間

例えば、築25年の木造物件を購入した場合、減価償却期間は、
22年×20%=4年 となります。

減価償却費を大きくするために減価償却期間を短くとるのであれば、築年数が法定耐用年数を超えている物件がよいでしょう。

減価償却費を実際に計算してみよう

事例を基に実際に計算をしてみましょう。

 

築25年の鉄骨造の物件を1億円(土地5000万円、建物5000万円)で購入した場合の年間の減価償却費はいくらですか?

答え:
建物価格・・・5000万円
減価償却期間・・・(34年―25年)+25×20%=14年

5000万円÷14年=357万円/年

計算できましたか?
このように、減価償却費を計算する場合は、建物価格と減価償却期間がポイントになります。


3.見落とすな!減価償却をすると譲渡税が大きくなる可能性がある

支出を伴わない減価償却費は一見、いいことづくしのように感じますが、実はデメリットもあります。

5000万円で購入した建物を6年後に5000万円で売却できたとします。
これだと売却益はゼロなので、譲渡税はかからないと思いますか?

答えはNOです。

減価償却をすると、建物の会計上の価値(=簿価)が減っていくため、売却価格と建物の最終的な簿価との差額が売却益と見なされ、その部分に譲渡税がかかってきます。

例えば、上記のように5000万円の建物(耐用年数5年)が6年後に5000万円で売れ、土地も購入時と同じ価格で売れたとします。

1年目は1000万円減価償却するので、建物の会計上の価値は4000万円。
2年目はまた1000万円減価償却するので、建物の会計上の価値は3000万円。


5年目以降は建物の会計上の価値は1円 となります。

売却時の価格5000万円から会計上の価値1円を差し引くと、売却益は5000万円。
譲渡税率は20%なので、5000万円×20%=1000万円の譲渡税がかかることになります。
そのため、物件を売却するまでに1000万円以上の節税効果がでないと、無意味に多額の譲渡税を支払うことになるので要注意です。

参考:
短期譲渡・・・目安として物件取得から6年以内に売却をすること。譲渡税率は39%。
長期譲渡・・・目安として物件取得から6年を超えて売却をすること。譲渡税率は20%。

4.減価償却を利用した節税にとって最高の組み合わせは木造×築古×高収入×長期譲渡

この組み合わせは最も減価償却費を大きくとれ、かつ、所得税率・住民税率と譲渡税率の差が大きくなるので、特に高い節税効果を発揮します。ひとつずつ詳しく説明していきます。

・木造
木造の法定耐用年数は22年と、他の構造に比べて短いため、同じ建物価格・同じ減価償却期間だったとしてもより大きな減価償却費をとることができます。

・築古
法定耐用年数切れなら法定耐用年数×20%で減価償却ができ減価償却期間が短いため、同じ建物価格・同じ構造でもより大きな減価償却費をとることができます。

・高収入
物件保有時の所得税・住民税率と物件売却時の譲渡税率の差異を利用することで、単なる繰り延べではなく、税金額を少なくすることができます。
高収入であればあるほど所得税率・住民税率は高くなるので、節税効果が高まることは自明ですね。

・長期譲渡
上記でもお伝えした通り、所得税・住民税率と物件売却時の譲渡税率の差異を大きくすることで節税効果が高まるので、譲渡税率が短期譲渡よりも低い長期譲渡をしましょう。

ちなみに、税率差異を利用した節税では、長期譲渡の譲渡税率20%を下回る所得税・住民税率だと効果はありませんので、その場合は節税効果ではなく収益性を重視しましょう。


5.減価償却を利用した節税にとって最悪なのは新築区分マンション

価格帯が安い、融資がつきやすい等の理由からお手軽に始めやすく、サラリーマンが最初の不動産投資としてチャレンジするケースが多いです。しかしながら、節税目的であれば以下の理由から絶対におすすめしません。

5.1.減価償却期間が長いため減価償却費をとりづらい

減価償却費を大きくとれると節税に効果的であるとお伝えしましたが、新築区分マンションは耐用年数が長く減価償却費をとりづらいため、節税には向いていません。

新築区分マンションで節税できた!といっている人がいるかもしれませんが、恐らくそのような節税効果を感じられるのは初年度だけです。なぜなら、初年度に経費計上できていた登記費用や金融機関手数料等の諸費用(50万円~80万円)は翌年度から計上できなくなるからです。

そのため、2年目から思ったより節税効果がないな・・・と感じる日々が始まります。

年々節税効果が薄まり、不動産所得が黒字になると一転して納税義務が発生します。
そのため、元々給与所得のあるサラリーマンにとっては納税要因が増えてしまい、むしろ不動産投資を始める前より手残りが減ってしまう場合もあるので要注意です。

他にも、節税とは別の観点となりますが、新築区分マンションは購入後価格が3割目減りすると言われ、ローン残債を上回る価格での売却が難しくなることもあることを頭に入れておきましょう。


さいごに

いかがでしたでしょうか。

この記事を読んだ皆さんが不動産投資で節税ができる仕組みを理解し、節税効果の高い不動産投資を行えるよう願っています。

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