既存不適格物件に投資するリスクと購入してもよいケース

不動産投資で中古物件を探す時に、多くの方が重視するのが利回りの高さです。不動産投資サイトで物件を探していると、稀に相場よりも利回りが高い物件を見つけることがあります。しかし、価格が安い物件にはそれなりの理由があるのです。

「人気エリアなのに不思議なくらい利回りが高い…もしかするとお宝物件かもしれない!」

そんな風に思って物件情報をよく見てみると、その物件が「既存不適格」であることに気付いた、なんて経験がある方もいるのではないでしょうか。既存不適格という言葉からは、どこかマイナスなイメージが連想されがちですが、とはいえ利回りの高さはかなり魅力的でしょう。

実際のところ不動産投資において、既存不適格の物件は購入してもよいのでしょうか。

結論としては、その物件が既存不適格であっても、デメリットを加味した上でも金額や入居付け、融資などに問題がないのであれば、購入してもよいでしょう。既存不適格は価格が安い傾向にあるため、デメリットさえクリアできるのであれば、投資対象として大変魅力的にもなり得ます。

ただし、既存不適格にはいくつかの種類があり、基本的に購入は避けた方がよい既存不適格のパターンもあります。この記事では、既存不適格の種類や購入する上でのリスク、購入してもよいケース・避けるべきケースを解説します。


1.既存不適格とは

1.1.既存不適格とは

既存不適格とは、建築当時は適法だったものの、その後の法令改正や都市計画変更などによって、現在の建築基準法に違反してしまっている建物のことです。

建築基準法では、原則として、建物全体が着工時の法律に適合していることが要求されます。一方で、昭和25年に公布・施行された建築基準法は、現在までに何度も改正されています。そのため、中古物件の場合、既存不適格となっていることはそれほど珍しくありません。

既存不適格の建物は事実上違法の状態ですが、すぐに建て替えなどをする必要はなく、そのままの状態で住んだり賃貸したりし続けることができます。ただし、建て替えや増改築をする際には、原則として現在の法令に適合するように建築しなければなりません。

1.2.違反建築との違い

既存不適格と似て非なるものとして「違反建築」があります。

違反建築とは、建築基準法や都市計画法などに違反して建築された建物のことです建物を建築した当初から法令に違反しているケースや、増改築工事などを行った時に法令に違反したケースがあります。既存不適格が建築時には適法だったのに対し、違反建築は建築時に法令に反して建てられているという点で明らかに異なっています。

違反建築について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
違法建築とは|リスクと違法建築事例、買ってもいい物件の基準を解説

1.3.既存不適格の代表的な事例

既存不適格と一口にいっても、さまざまな種類があります。その物件がどのような種類の既存不適格なのかによって、購入しても問題ない場合、購入を避けた方が良い場合に分かれます。この章では、既存不適格の中でも代表的な事例をいくつか紹介します。

旧耐震基準

耐震基準の改正以前に建築された建物の中には、耐震強度が不十分で既存不適格となっているものがあります。特に昭和56年(1981年)に建築の耐震基準が大幅に見直され、531日以前に建築確認申請が受理されたものが「旧耐震基準」、昭和5661日以降のものが「新耐震基準」と呼ばれています。

旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないような構造基準として設定されています。一方で新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されています。

不動産投資の観点からいうと、旧耐震の物件は銀行融資が出にくいというデメリットがあります。また、過去には震災で旧耐震の物件が倒壊して入居者に死傷者が出た際に、オーナーに損害賠償が請求された判例もあります。旧耐震基準の建物が必ずしも耐震性能が著しく低いとは限りませんが、上記のようなデメリットやリスクを踏まえると、基本的には購入しないのが無難といえるでしょう。

建ぺい率・容積率オーバー

建ぺい率や容積率をオーバーしている建物も、既存不適格の良くあるケースの一つです。

建ぺい率や容積率オーバーの既存不適格になる原因としては、以下のような例があります。

  • 建築後の法改正で建ぺい率・容積率の制限が引き下げられた
  • 建築後に用途地域が見直され、建ぺい率・容積率の制限が厳しくなった
  • 建築後に都市計画事業の施行による敷地の一部の収容や、敷地の一部の売却によって敷地面積が減少した

建ぺい率や容積率をオーバーしている物件のデメリットは、同じ規模の建物を再建築することはできないという点です。また、詳しくは後述しますが、金融機関から融資を受けられるかはケースバイケースで判断されます。

幅員4m以上の道路に接していない建物

建築基準法では、原則として建物の敷地は幅員4m以上の道路に接している必要があり、前面道路が4m未満の場合には建物を建築できないという「接道義務」の規定があります。しかし、古くから市街地が形成されている地域では、4m未満の道路が多くあり、沿道の建物のほとんどが既存不適格となっています。

このような建物は、建て替え時に建物を道路の中心線から2m後退(セットバック)させることで、再建築が認められています。このような既存不適格はすぐに建て替えを求められることがありませんが、前面道路の幅員が4m未満の場合、消防車が通行できないなど防災面に問題がある点には注意が必要です。

接道義務を満たしていない建物のセットバックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
セットバックとは?目的やセットバック距離の計算方法、注意点を解説

エレベーター(昇降機)

平成17年の千葉県北西部地震によるエレベーター「閉じ込め事故」と平成18年の東京・港区の共同住宅で起きた戸開走行による「挟まれ事故」をきっかけに、エレベーターの安全に関する見直しが行われ、平成21年9月に建築基準法が改正されました。

この改正では戸開走行保護装置の設置や地震時等管制運転装置の設置が義務付けられましたが、これ以前に設置されたエレベーターはほとんどが既存不適格となりました。既存不適格のエレベーターは引き続き使用することができますが、実際に人命にかかわる事故が発生したように、安全性に大きなリスクを抱えている点には注意が必要です。


2.購入前に注意したい既存不適格の3つのリスク

既存不適格の物件は違反建築とは異なり、そのまま使用することは認められています。しかし、売買や建て替え・増改築などにおいてデメリットがあるため、不動産投資で購入する前にはそれらを認識しておくことが重要です。この章では、既存不適格物件を購入する前に確認しておきたいリスクを解説します。

2.1.融資を受けづらい

既存不適格の場合、違反建築ほどではありませんが、金融機関に融資を渋られることがあります。問題なく融資を受けられるケースもありますが、金利を高めに設定されたり、通常より自己資金を多く求められたりすることもあります。購入時の資金調達には苦労する可能性があると考えておきましょう。

もちろん、融資を使わずに現金で購入するという選択肢もありますが、融資が出づらい物件であれば売却が難しくなります。金融機関からの融資が出ず、現金で購入できる新買主もなかなか見つからない場合、売却価格を下げざるを得ません。既存不適格の物件を自分が購入できたとしても、将来売却できるのかという出口戦略の面までリスクを検討する必要があります。

2.2.建て替えや増改築が難しい

既存不適格の建物は、すぐに是正する必要はありません。ただし、建て替えたり、増改築工事を行ったりする際には、現行の法令に適合するように建築しなければなりません。

しかし、現行法に適合させるように建て替えや改築を行うのは、場合によっては簡単ではありません。既存不適格で容積率の制限や日影規制をオーバーしている場合、建て替えや改築後には現状よりも建物の大きさを小さくしたり、高さを低くしたりしなければならないことがあります。

建て替えや改築時には現在よりも不利な条件の建物しか建てられないとなると、将来的な売却にも悪影響が及びます。既存不適格の物件を買う前には、再建築・改築時にどのような規制があるかを確認しましょう。

2.3.売却価格が安くなりがち

先ほども少し触れましたが、融資が難しい既存不適格物件や、再建築時の規制が厳しいなどの理由で需要が低い既存不適格物件は、売却に苦労する可能性が高いです。高い価格で売ることは難しいため、売却益を狙うのではなく、できるだけ安値で買って高利回りで稼ぐという戦略が妥当です。

出口戦略を考える上では、既存不適格物件を購入する時に、「不動産業者が売主か、仲介か」というのを一つの判断基準にすることができます。買取再販業者の場合、一度物件を所有することはそれなりのリスクがあるため、売りづらい物件はそもそも購入しません。買取再販業者が仕入れた既存不適格物件であれば、融資がつく目途が立っているなど、比較的出口戦略をとりやすい物件であると考えられます。


3.既存不適格の物件を購入してもよい場合

2章では、既存不適格の物件を購入する上でのリスクを解説しました。逆に、これらのリスクを排除できたり、考慮した上でも価格が安かったりする場合は、投資対象として問題ありません。本章では、購入してもよい既存不適格物件の特徴を紹介します。

3.1.是正工事費用等を含めても金額が相場以下の場合

既存不適格の物件を購入する際、購入価格だけでなく是正工事費用を含めて考慮しても利回りが十分高いと判断できるならば、投資対象としてよいでしょう。

既存不適格の物件は違法建築とは違うため、基本的に直ちに是正工事をする必要はありません。しかし、現状の法令に不適格な状態であるため、そのまま使用していれば、何かしらのリスクは存在し続けることになります。将来のいずれかのタイミングで既存不適格の是正工事をすることを考えると、購入時にはその費用を含めて検討しなくてはなりません。

例えば、エレベーターの既存不適格です。

前述の通り平成21年にエレベーターの安全に係る技術基準の見直しが行われ、建築基準法が改正されました。これにより、平成21年以前に設置されたエレベーターのほとんどが既存不適格となっています。したがって、エレベーターが設置されている築古の一棟マンションなどを購入する際には、その是正工事費用を見込んでおきましょう。

実際に例を挙げて考えてみます。購入価格1億円、利回り10%の物件の場合、仮にエレベーターの既存不適格是正工事に1,000万円を要するとすると、実質的な利回りは約9.1%になります。

既存不適格の物件は、価格だけみれば相場より安い場合が多いです。しかし、実際には是正工事等で追加の費用がかかることがあります。購入を検討する際にはそれらの費用まで含めて計算し、「相場と比べても本当に良い物件か?」を判断してください。

3.2.金融機関から問題なく融資が出る場合

既存不適格の物件を購入する上での問題点の一つが、前述の通り、金融機関からの融資を引き出しにくいという点です。しかし、すべての既存不適格の建物に対して融資が出ないわけではありません。融資が出る既存不適格であれば、出口戦略に関してはある程度安心できるでしょう。

では、どのような既存不適格であれば金融機関からの融資が出るのでしょうか。廊下幅が規定に満たない、などは、問題なく融資が出るケースが多いようです。また、既存不適格としてよくある容積率オーバーについては、金融機関によって融資基準があります。ある銀行では、現行の規定を満たすように再建築した場合の戸数をもとに収益性・評価額を判断し、融資額を決めるようです。(※収益還元法で評価する場合)

具体例として、現在総戸数8戸で各部屋の家賃が5万円の物件を考えます。この物件が容積率オーバーの既存不適格であり、現行法に合致するように再建築すると(部屋の大きさなどは変わらないとして)、総戸数が6戸になるとします。この場合には、本物件の収益性を現状の5万円×8戸で計算するのではなく、5万円×6戸で計算し、それをもとに融資額が決められます。

なお、関西地域ではもともと違反建築や既存不適格が多いという背景から、関東など他の地域に比べて、これらの物件に対して融資が出やすいようです。

3.3.好立地で更地として高値で売却できる目途がつく場合

既存不適格の物件は再建築や増改築に不利な制限が課されるケースが多く、売却が難しい傾向にあります。しかし、その物件が好立地であり、更地にして土地として高値で売却できる見込みがある場合は、出口戦略として非常に魅力的です。

好立地かつ再建築によって特に支障なく建物を建てられる土地であれば、問題なく売却できるでしょう。もし既存不適格の建物ということで安い価格で購入できるなら、更地にして売ることで売却益も狙える可能性もあります。

既存不適格の物件を購入する前には再建築時の制限についてきちんと確認し、土地として売却するという出口戦略が描けるかも検討しておきましょう。


4.さいごに

既存不適格には様々な種類がありますが、それらの物件は一般的に価格が安いことが多いです。不動産投資家にとっては魅力的ですが、主に出口戦略をとりにくく、売却価格が安くなりがちであるというデメリットがあります。

そのため、既存不適格の物件に投資するのであれば、「できるだけ安く買って利回りを高くし、最低限売却できる目途は立てておく」という戦略がよいでしょう。

ただし、本記事で購入してもよい既存不適格の例をいくつか紹介しましたが、この戦略は初心者にとっては難易度が高いといえます。そのため、初心者であれば既存不適格の物件は購入を避けた方が無難でしょう。

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