家の近くやオフィス街、観光地でよく見かける「月極駐車場」や「コインパーキング」の看板。これらには所有者がいて、アパートやマンション投資と同じように駐車場料金を収益として得ています。
月極駐車場 | ・月単位で駐車料金を得る仕組み。 ・借主と長期的な契約を結ぶことになるため、安定した収益を得られる。 ・未舗装、かつ精算機などの機械を設置しなくても運営でき、初期費用や手間は少ない。 |
コインパーキング | ・時間単位で駐車料金を得る仕組み。 ・周辺環境や料金設定などで売上が大きく変わる。 ・精算機などの機械を設置する必要があることから、初期費用は月極駐車場に比べて高い。 |
駐車場投資は土地に建物を建てる必要なく、人に土地を貸すことができるので、
「アパート・マンション投資はかかる費用が高くて始められない」とハードルの高さを感じている方でも比較的取り組みやすいという印象もあるのではないでしょうか。
一見、取り組みやすそうな駐車場投資ですが、実は土地を持っているか、持っていないか、立地などによって収益性が大きく変わります。
今回の記事では、以下についてお伝えします。
・駐車場投資をおすすめできるケース
・駐車場投資の仕組み
・駐車場投資を行う際の注意点
目次
1.駐車場投資を基本的にはおすすめしない理由
あなたが不動産投資を始めたいと思っているのなら、駐車場投資はおすすめしません。
その理由は以下の3つです。
・アパート投資と比較し収益性が低い
・減価償却費が少なく、節税対策には向かない
・固定資産税、相続税の評価が更地と同じ
1.1. アパート投資と比較し収益性が低い
駐車場投資を選ぶべきでない理由の1つ目は、アパート・マンション投資と比較し収益性が低いからです。
アパートやマンションと、駐車場の形をイメージしていただければわかりやすいのですが、アパートやマンション投資(一棟)は、平面の土地に立体の建物を建てることで1フロア分以上の収益が得られます。一方で駐車場投資は、多くの場合1フロア分の収益しか得られないため、効率的な投資方法とは言えません。※立体駐車場という例外もありますが
具体的な事例で比較してみます。
条件
・埼玉県内(月極駐車場の平均賃料1万円、木造アパートの平均賃料7万円)
・空き地を所有しており土地購入費はないものとする
・木造アパート建築費5,000万円はの融資条件は融資割合8割、返済期間30年、金利2%とする
・土地面積50坪
月極駐車場 | 木造2階建てアパート | |
収容規模 | 10台 | 6部屋 |
初期費用 | 200万円(土地整備費、フェンス設置など) | 5,000万円(建築費など) |
月収入 | 10万円(1万円/1台) | 42万円(7万円/1部屋) |
年間賃料収入 | 120万円 | 504万円 |
年間返済額 | なし | 136万円 |
1年後の収支 | 120万円 | 368万円 |
アパート建築の際に融資を受けた場合、1年間で140万円弱の返済が発生しますが、それでも初年度1年間での収支には200万円以上の差が出ています。
そのほかにも購入時にかかる諸経費や運用中の修繕など諸々の費用はかかってきますが、ざっくりと計算してみても駐車場投資の収益性は低くなってしまいます。
1.2. 減価償却費が少なく、節税対策には向かない
駐車場投資を選ぶべきでない理由の2つ目は、減価償却費が少なく、節税対策には向かないからです。
減価償却費を計上することができるのは、建物などの構造物で、土地は減価償却の対象ではありません。そのため節税を目的として投資を始めたいのであれば、アパートやマンション投資がおすすめです。
駐車場投資でも、舗装や設置する機械、監視カメラなどで減価償却を取ることができるものがありますが、節税効果を期待するほどの規模にはならないでしょう。
※節税目的でなく純粋に賃料収入を得たいというのが主な目的であれば、駐車場投資をおすすめできるケースもあります。
1.3. 固定資産税、相続税の評価が更地と同じ
駐車場投資を選ぶべきでない理由の3つ目は、固定資産税、相続税の評価が更地と同じだからです。
建物が建っている土地には減税制度がありますが、更地の場合には減税制度がありません。
・固定資産税
住宅用地と比較しての条件ですが、駐車場投資に使用している土地の固定資産税は、住宅用地の6倍(200㎡以内の場合)にものぼります。
・相続税
土地に建物を建て、その建物を人に貸している土地(貸家建付地)は、更地よりも相続税評価額が安くなります。駐車場も人に貸しているから安くなるのでは?と思ってしまいそうですが、土地に建物が建っていることが条件ですので、土地を駐車場として人に貸している場合は、貸家建付地としての評価ができません。
2.土地を所有していて手出しを少なくビジネスを始めたいなら、駐車場投資はおすすめ
かつ
手出しを少なくビジネスを始めたい
あなたが土地を所有していて、かつ手出しを少なく収益を得る投資を始めたい場合には、駐車場投資はおすすめです。建物を建てて投資するよりも費用はかからないため、初期費用を抑えてビジネスを開始することができます。
2.1.駐車場投資は、使用していない土地を収益化することができる
使用していない土地を持っていて、かつその使い道に困っているなら、駐車場投資はおすすめです。
空地を所有しているけれど、今後売却するか、活用するか迷っている場合には、当面の間駐車場投資をして収益を得るのが最適です。また、駐車場投資をやめるときも建物を壊したりする必要がないので、他の用途への転用がしやすいのも駐車場投資もメリットです。
2.2.駐車場投資は、初期費用を抑えて始められる
駐車場投資は、土地の上に建物を建てる必要がないため、アパートやマンションなど他の不動産投資と比べて初期費用を抑えてビジネスを開始することができます。
アパートやマンション投資だと、建築費用だけではなく、賃貸経営にかかる維持・修繕費なども負担になりますので、運営の面でも手間やお金のかからない投資といえます。
※1.1.と同じ埼玉県内の50坪で比較した場合
月極駐車場 | コインパーキング | 木造アパート | |
初期費用 | 200万円(主に土地整備費) | 350万円(ロック板や精算機含む) | 5,000万円(主に建築費) |
しかし、これらのメリットはあくまでも元々土地を所有している場合に効果を得られるもので、1.1.でお伝えしたように1年で200万円以上の収益差が出るなど、リスクは少ないですが、アパート経営ほど大きなリターンもあまり期待することができません。
そのため、新しく土地を購入して駐車場投資を始めようとするのはあまりおすすめできません。
3.駐車場投資をする人が押さえるべきポイント
駐車場投資は、費用や手間が少ないことがメリットとして挙げられますが、これから始めようとしている方は、第2章でお伝えしたデメリットと併せて、これからお伝えするポイントを押さえて検討することをおすすめします。
3.1.駐車場に適した土地か見極める
駐車場投資で成功を目指すなら、駐車場に適した土地か見極めることが大切です。
他の不動産投資にも共通して言えることですが、駐車場投資は周辺環境によって需要が変わります。たとえば観光地や駅前などは駐車場の需要が高いです。
〇駐車場投資に適した土地の特徴
月極駐車場 | 住宅街 | 近隣のマンションやアパートの住人の利用を見込める |
飲食店の近く | 飲食店と契約することで、来店客の利用を見込める | |
コインパーキング | 駅前 | 公共交通機関を利用して遠出する人が、駅まで車で向かって停めておくケースも多い |
オフィス街 | 営業先での駐車場所として利用される | |
観光地 | 観光地では駐車場が充実していない場所も多い | |
商業施設の近く | 土日は商業施設の駐車場に空きがない場合も多い |
3.2.参入障壁が低く、近隣に競合の駐車場ができやすいことを意識する
駐車場投資は、初期費用が安く、既に土地を持っている人ならすぐに始めることができるため参入障壁も低いです。
そのため需要を見込める立地であれば同じような駐車場が近くにできやすいことを意識する必要があります。競争率が上がり、収益源である駐車料金を下げるなどの対応を取らなければなりません。
3.3.初期費用の相場を知る
駐車場投資は初期費用が安いとお伝えしましたが、それはアパートやマンションを建築して投資する時との比較です。コインパーキング投資を始める場合は、整地や舗装、精算機などの設置が必要です。以下の表のような初期費用がかかることを頭に入れておきましょう。
必要な設備など | 費用の目安 |
整地、アスファルト塗装 | 4,000~5,000円/㎡ |
精算機 | 40~50万円/1台 |
ロック板 | 約10万円/1台 |
看板、照明など | 15~20万円 |
4.まとめ 駐車場投資は土地所有者向けの投資
駐車場投資は、既に土地を持っていてその活用に困っている人にとってはおすすめの投資法であり、これから新しく駐車場に適した土地を探して購入するのはあまりおすすめしません。
不動産投資で効率良く収益、節税効果を得たいと考えている場合は、アパート・マンション投資の検討をおすすめします。
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